T&Jシリーズには、個性豊かな脇役たちが次々に登場している。準レギュラー、1話限りのゲストキャラクター、意外に忘れられている名(?)キャラクターをここに紹介したい。ただし、あくまでH&BのT&Jシリーズを中心としているので、第2期以降のキャラクターについては、ごく一部にとどめた。
なお、キャラクターの名称については、日本語版のTVのナレーションで語られたものについては明記し、原語版での名称が確認できたもののみ、英字で並記した。その他は仮称である。掲載順は、レギュラー以外はほぼ年代順にした。登場作品名は日本TV放映版のみにした。リストを参照されたい。
お手伝いさん (Mammy Two-shoes)
トムが居候する家にいる、黒人のメイド。話によっては、主人のようにも見える。(主人は画面に現れない。)本国での呼び名にならって、SCMスタッフの間では「足だけおばさん」と呼ばれている。(もちろん手だって見えますがね。)ほとんど初期の作品は、トムたちの視点を中心にしているため人間は顔を見せない。擬人化された動物たちと人物に一線を画すための演出として、大正解だったと言えるだろう。(フライシャーの「バッタ君町へ行く」もそうだった。)
ニブルス(タフィー)Nibbles(Tuffy)
「捨てネズミ(’46)」より。
ジェリーの家にころがりこんだ、まだオムツもとれない子ネズミ。それがニブルスである。
ジェリーの家に捨てられていたバスケットに入っていたのは、いつも腹をすかせているニブルスであった。これがデビュー作である。外見はひたすらかわいいが、行動原理は食欲。まったくこの小さい体にどうやってあの料理が入るんでしょ。ジェリーの弟分として活躍、時にジェリー以上の力を発揮する。
アカデミー賞受賞作「台所戦争(’49)」再登場。シチュエーションは同じ。孤児院から里親を頼まれるジェリー。ギャグのパワーは前作以上!
この子ネズミの名がニブルスなのか、タフィーなのか一時期、物議を醸したのだが、コミック版での呼び名がタフィー、アニメではニブルスというのが一般的な解釈だったが、’46年から’52年まではニブルス、53年を境にして、タフィーになってしまう、というのが真相であった。そしてその境に位置する作品というのが、そう!あの!「インディアンごっこ(’53)」である。同じ顔した子ネズミが2匹。なんとこの作品、ニブルス・タフィー交替記念作品だったのですねえ!
T&Jには、フランス2銃士シリーズとも言うべき作品が4本あり、「パーティ荒らし(’52)」でジェリーの弟子として登場。歌いながらハムを切るシーンは有名。「武士道はつらい(’54)」では旧友フランソワ=マウスの忘れがたみ、プチとして、「武士道修業も楽じゃない(’55)」ではいとこのタフィーとして、登場。「王さまをおこさないで(’58)」がラスト。マジに推論するなら、ニブルス&タフィーという双子の子役がいて、ニブルスは映画で、タフィーは漫画でデビューして、途中で交替したのではなかろうか。「ロジャーラビット」の世界みたいに考えればいいのである。2匹一度に出演することも可能だし。設定もその都度いとこや捨て子に変えているのだろう。この他、「花火はすごいぞ(’50)」「ネズミの学校(’54)」フランスシリーズのバリエーション、「我こそ勇者(’58)」に登場した。
スパイク (ブルさん)Spike OR Butch
ニブルス同様、「ロジャーラビット」的世界観に基づけば、T&Jに登場するブルドッグはみなスパイクである。だが、「スパイク」らしさを持って登場したのは、この「命の恩人(’44)」からである。野犬狩りに捕まるが、その後「猫はやっぱり猫でした(’44)」で収容所の、「へんな魚つり(’47)」では豪邸の番犬に就職する。
「共同作戦(’42)」でT&Jのとばっちりを受けるブルドッグ。まだただの犬、といった感じ。実質的にはこれがスパイクのデビュー作と見てよかろう。しかし、ブルドッグという犬がいかに番犬としてポピュラーであったか、よくわかるね。
「ブルおじさん(’50)」より。スパイクがジェリーを助ける「命の恩人」パターン。この頃になると、スパイクはT&Jの住む家の番犬になり、「共同作戦」のようにとばっちりを受ける役が定着してくる。出演作は、「ただいまお昼寝中(’45)」「お家はバラバラ(’52)」「居候(’54)」「みーちゃったみーちゃった(’57)」など。
「止まらないシャックリ(’54)」より。
「ここまでおいで(’49)」で初登場したスパイクの息子、タイク(TYKE)。子煩悩におちいる、スパイク。だがしかしゴジラとミニラ同様、母親については謎に包まれている。「パパは強いな(’51)」、「パパの教育(’53)」にも親子で登場。
「バーベキュー戦争(’56)」より。
シネスコの時期なので、線が太く、絵が単純になってきているのがおわかりか。「ブルさんのピクニック(’55)」もよく似たパターンであった。
人気キャラだけに、T&Jとは別に、「つかまるのはごめん(旧プログラムのみ・GIVE
AND TYKE’57)」「名犬チビ(’57)」の2本、主演作がある。
「恋ははかなく(’46)」より。
スパイクを役者と見るなら、これも紹介せねばなるまい。トムがお熱を上げるメス猫、トゥードルスの家の番犬だが、牙も鋭く、狂暴なキャラクター。その名もキラーだ。
ちなみにアヴェリーが、スパイクを3枚目として使い出すのは「財産をねらえ(’49)」。
本家のT&Jシリーズでは、’53年からはブルさんの名前は「スパイク」で安定するが、それ以前は時々「ブッチ」とも呼ばれていた。
トムさんの悪友たち
トムさんの悪友たちは、みなノラネコらしい。黒猫(左)チビ(中)と赤猫(右)には名前もない。黒猫がブッチ
BUTCHと呼ばれるのは、「腹ぺこブッチ(’54)」から。
赤ちゃんスタイルのトムをひやかしに登場。赤猫以外のブッチとチビは初登場で、トリオとしてはこれ以後、意外にも2回しか登場していない。もっと出てほしかった!
「悪魔のささやき(’43)」。赤猫初登場。ジェリーをめぐって、トムと対決。
「春はいたずらもの(’46)」より。
ブッチはトムの恋のライバルとして登場する。「仲間割れ(’46)」ではネズミ退治会社に就職している。
「こわいお手伝いさん(’47)」より。
失業後、一度はトムの家に同居するが、ろくに働かないで食費ばかりかかる2匹にお手伝いさんは条件を出す‥‥‥。結局、2匹とも家を追い出されてしまいトムは戻れたようだが、ブッチは再び野良猫の身に。トムさんとちがってしたたかなブッチには、野良猫が似合っている。その他「テニスなんて楽だね(’49)」「腹ぺこブッチ(’54)」にも出演。
「計算ちがい(’51)」より。
またもトゥードルスをめぐって、恋のライバルとして登場したブッチ。頼りないトムに対して、アウトローの魅力で迫るブッチであるが‥‥‥。
2匹がかりでもジェリー1匹に翻弄されるようじゃまだまだジリツした猫とは言えないぞ。
傑作!「土曜の夜は(’50)」。トムさんと野良猫トリオ。抜群のコンビネーションだが?
「トムさんと悪友(’51)」より。
夜遊びで寝不足になるトム。なぜかこのトリオはチビがいない。代わりにブッチの色を変えただけのような猫(右)が出ている。
チビはどう見ても子供のため、夜遊びの場面には登場させられなかったのだろう。
「映画大会(’55)」より。
久しぶりに3匹そろって登場、映写セットを運んでいる。
チビの足が宙に浮いたままで走っているギャグはけっこう典型的で、「未来少年コナン」でも宮崎駿がジムシィを使ってやってたと思う。
赤猫のしっぽにご注目。シリーズを通じて、この猫は意味もなくしっぽに包帯を巻いている。彩色前の原画の状態ででブッチと赤猫の区別をつける苦肉の策だろうか?謎である。
アヒル(時にカモ)
「母をたずねて (’50)」で登場したアヒル、「おしゃべり子ガモ (’52)」ではカモであったが、ほとんど同じキャラと考えていい。(どっちもDUCKだ。)「おかしなあひるの子
(’53)」のカナヅチのアヒルもよかったが、やはりこの「オーバーな奴
(’54)」が印象的である。
自分が醜いと思いこみ、死を決意する。ジェリーはなんとかなぐさめるのだが‥‥。日本版では「ちびすけくん」という。
人間、時に自分を悲劇の主人公に思いたがるものだが、ナンセンスなまでに悲観的なこのアヒル、実にミジメで可愛く、感情移入ができてしまう私はマゾでしょか。
短絡的なだけに、カワイ子ちゃんの出現で明るいアヒルになる。勝手にしやがれ。
他に「南へ行こう (’55)」では自分をカモと信じこみ、「素敵なママ
(’55)」ではトムを母親と慕うアヒルで登場。トムに食べてもらおうとする場面は涙なしには見られません。どこか異常で、健気な性格。これがアヒルくんの魅力でしょう。
「おめでたいアヒル (’58)」。「イースターおめでとう!」と叫ぶ、何考えてんだかよくわからないアヒル。「忍法ネコだまし
(’58)」同様、明るい性格。TVの「クマゴロー」にも登場した。(Yakky Doodle)
「にわとりばあさん (’42)」より。
ジェリーが逃げ込んだ鶏小屋にいるにわとりのおばさん。トムがジェリーを捕まえようと巣に手を入れると、卵泥棒と思われてしまう。(猫より強い!)
トムにしっぽを切られてしまったため、ほうきをしっぽ代わりに付けるというオチ。しかし、なぜ題名が「ばあさん」なんでしょね。
「赤ちゃんはいいな(’43)」に登場した、トムが住む家の主人の娘。
お手伝いさん同様、顔は見えないが、幼稚園ぐらいだろうか。トムを赤ちゃんに見立てて遊ぶ。家の広さといい、この娘の様子といい、かなり裕福な家庭に見える。アメリカTV映画に登場する家庭は、1960年代の日本人のあこがれだったもんね。
「悪魔のささやき(’43)」の悪魔。
人間が悪い行動をするのは悪魔がそそのかすからだ‥‥‥という考えをそのまま映像にしている。当然、善の心は天使の姿で出てくるわけ。シリーズを通じてよく使われているパターンだ。しかし、顔はトムだがプロポーションはジェリーだな、こりゃ。
「可愛い花嫁さん(’45)」のワシ。
ワシがネズミを食べるかどうかは知らないが、(管理人注:猛禽類は、ネズミ、ウサギなどの小動物を餌にしています。)ジェリーを横取りしようと、トムはワシのメスに変装して近づくが‥‥。このトムがワシのメスに見えるとは、どういう趣味してるのかね。しかし日用品を利用してのトムの変装テクニック、よく出てきます。
「春はいたずらもの(’46)」の悪魔。
これもジェリーの嫉妬心が実体化した表現。いつも自分に向けられていたトムの関心が、メス猫に向いてしまって憂欝になるジェリー。両者の精神的な結びつきを表すエピソードだが、ジェリーのトムに対する感情が実は男女関係のそれに近いことを象徴しているのかも。
「へんな魚つり(’47)」。
トムが忍び込んだ豪邸の池にいた、変な魚。なぜか牙があって、さおも噛み砕く。
「やんちゃな生徒 (’48)」。
トムが教授になって、ネズミの捕り方を講義するが、ごらんのようにこの生徒、日本の大学生同様ほとんど講義を聞いていない。おまけにジェリーと仲良くなってしまい、協力してトムを撃退する。よく見れば、顔といい体形といい、ほとんどジェリーである。無理もない。
「強敵あらわる (’48)」より。
稲妻ジョー。トムの非力に業を煮やしたお手伝いさん、ネズミとりのプロを雇った。走ること稲妻のごとし。(さすがアニメ、比喩でなく映像化しちゃうあたり‥‥‥。)LIGHTNIN’
が原語版の名。こいつ赤色を黒に塗り替えるとブッチになりそうだが、気のせいか?
「なかよし (’48)」「トムくん空をとぶ (’52)」でジェリーに加勢するカナリア。
尻尾と足の形をのぞけば、いつものアヒルの子と変わらないキャラクター。が、性格はかなり楽天的で、軽はずみな行動でトムに食べられそうになる。特技・カナリアなので、なんと空を飛べる。
「海の底はすばらしい (’49)」より。
南の海で会った、ジェリーそっくりの人魚(?)。MERMAIDならぬ、MERMOUSEである。
顔から性格までジェリーそっくり。それもそのはず、トムの夢であったという安易なオチながら水中版T&Jとしてけっこう楽しめてしまう。漫画映画で夢オチってわりと普通なのか?
「いたずらきつつき (’49)」。
卵からかえった直後、ジェリーを見て親と思い、しつこくまとわりつく。見かけは可愛いが、くちばしで何でも削ってしまう、危険なやつ。T&Jってこんなゲストが多いな。
「天国と地獄 (’49)」。
トムが死んでしまった!(実は夢オチだけどね。)天国に行く列車に乗ろうとすると、改札のおじさんがストップをかける。トムはジェリーをいじめたために、ジェリーの赦免状がないと地獄に送られてしまうのだ。地獄にはスパイクみたいな鬼が待っている!天国にはどんな天使がいるんだろ う?(トゥードルスみたいのかな。)
「逃げてきたライオン (’50)」。
サーカスから逃げてきた‥‥‥というシチュエーションの話の第1弾。だいたい、ジェリーがかくまって一緒にトムを翻弄するパターンである。
気の優しいライオンで、ジェリーと友達になる。本来ネコ科なのだから、トムと仲良くなってもよさそうなものだが‥‥‥。
「母をたずねて (’50)」。
あの、そう、あのアヒルの両親である。アヒルの初登場作品であるこの作品にのみ登場。(アヒルのページ参照のこと。)誘拐犯のトムを懲らしめにやってきたママ(左)とパパ(右)パパの胸の刺青に注目!強い海の男‥‥‥なんでしょうかね?
「ジェリーと金魚 (’51)」。
ここまで表情豊かな金魚というのは、かわいいというのを通り越して、不気味ですらある。これがネズミと共同戦線を張って猫を撃退しちまうんだからとんでもない。
よくよく見るとひれには指がちゃんとあるし、顔にはまゆ毛だってあるのだ。さすがにアメリカの金魚は違うなあ、と妙な感心をしてしまった子もいるに違いない。
「ごきげんないとこ (’51)」。
ジェリーのいとこ、ダイナマイト。(言語版では、MUSCLE=MOUSE、すなわち筋肉ネズミ!)家の壁のキラーマークにご注目。見かけはジェリーそっくりだが怪力無双で、街の猫からは恐れられている。‥‥‥余談だが、上の場面で読んでいる手紙はだれが配達しているんだろうか。服も着てるし、意外に戸籍あったりして。
同じく「ごきげんないとこ」より。
ダイナマイトに勝てないトム、ついに最後の手段、「殺し屋株式会社(だれが株を買うんだ、だれが!)」に電話する。コインをはじいているのは、「暗黒街の顔役」(ハワード・ホークス監督)のジョージ・ラフトの仕草から来ている。
ところで、下半身はどう見ても裸なのにポケットにつっこんでるような手はいったい何なのでしょう。
「南の島 (’51)」。
「ちびくろサンボ」が発禁になるご時勢である。これは原住民。まちがっても◯人ではありません。しかし土◯=人食い人種という当時の短絡的イメージそのままであり、これは放送禁止候補ですね。日本版タイトルもかつては「南の島には土人がいたよ」でありました。
トムが漂着した島になぜジェリーがいて、原住民に襲われるのかよくわからん話。当時、確かに南の島に対するイメージはこんな物だった。しかし猫やネズミを煮て食うのって、「人食い人種」か?
「可愛い子猫と思ったら (’52)」。
お手伝いさんが隣から預かってきた3匹の兄弟猫。おばさんの前ではとてもよい子、トムに対しては悪ガキ(などという生易しいものではない!)というとんでもないやつら。トムとジェリーは協力して立ち向かうが‥‥‥。
外見はとにかく可愛い。ディズニー的な柔らかい線を持ちながら、ダイナマイトは仕掛けるわトムが死んでもかまわないと言わんばかりの徹底攻撃。(漫画映画だからそうは死なないと言ってもねえ‥‥‥。)柔らかさとスピーディーさを合わせ持つ、黄金期の作画であるからこそ、このシチュエーションが生きるのである。
「可愛い逃亡者 (’52)」より。
サーカスから逃げ出した‥‥‥パターンの2作目。こんどは小さなオットセイである。おびき出すため、トムはゴムを身につけて、オットセイに変装、まんまとだますが、逆に自分がつかまってサーカスに連れられて行ってしまう。しかし相変わらず、日用品で変装するアイデアはさすが!
「人造ネコ (’52)」。
お手伝いさんが買ってきたネズミとり用のロボット。(といっても、こんな物を買ってくるからには、ここでのおばさんはトムの主人なのだろうか。)
ボタン1つで動き出し、狙ったネズミは逃がさない。トムは失業だ。(おお、「鉄腕アトム」に迫るSFではないか!)
「ジェリーとジャンボ (’53)」より。
おなじみディズニーの「ダンボ」のパロディ(?)編である。ダンボとティモシーならぬ、ジャンボとジェリーのお話。
サーカスの列車から転げ落ちたジャンボ、ジェリーと友達になる。家の中に象がいるのに驚き、トムは、猟銃で立ち向かうが‥‥。
そこへ、行方不明のジャンボを探して母親象がやってきた。ジェリーの名案、ジャンボをネズミに変装させた上に、母親まで‥‥‥。
このあと、トムは発狂!無理もない。
「ナポリよいとこ (’54)」。
トムとジェリーが外国に行く話はいくつかあるが、今回はイタリア。
ナポリの街を暴れ回る、犬3匹。しかし3匹のキャラクターの組合せって大体こんなものですね。
イタリアはナポリの豪傑ネズミ。これが街でも評判の正義漢、力も強い。名前は作品中では語られないが、トッポというらしい。もっとも、トッポとはイタリア語でネズミのことなのである。(トッポジージョの同類なのかもしれない。)
トムとジェリーと協力して、3匹のチンピラ犬をやっつける。
「親切なトム (’54)」より捨て犬。
車から捨てられた袋の中に6匹の子犬。1匹がトムになついてしまう。仕方なく、飼ってやろうとすると今度は残りの5匹が‥‥‥。「猫が犬を飼うんじゃない!」という方、某有名ネズミの方がすごいです。
「ひげも使いよう (’55)」に登場する、ジェリーの伯父さん、ペコス。(Pecos)
生まれはテキサス、特技はギター。怪力無双、神出鬼没、痛快無比。
テキサス出身だけに、映画「荒野の決闘」主題歌で有名な「いとしのクレメンタイン」を歌う。TV出演のためにジェリーの住む街にやってきたのだが、トムのひげがギターの弦に欲しくなり、トムを追いかけ回す。テレビの画面の中からトムのひげを抜く場面が傑作。
「失敗は成功のもと (’55)」より。
トムの図面に描かれた線画のトム。同じく線画のジェリーが本物のジェリーに危機を知らせる。絵が動き出すとは、恐怖の宇宙線でも当たったのだろうか。
この図面どおりに作っていれば、見事ジェリーは金庫の下敷きになる予定だったのだが‥‥‥。金庫にはまったトムのスタイルは最高でしたね。
「ダンスは楽し (’56)」に登場する熊。
例によって、サーカスから逃げてきた熊である。音楽好きで、聞けば陽気に踊りだしてしまう。
この時期、トムさんって家の主人のように見えるのだが‥‥‥。
「バーベキュー戦争 (’56)」よりアリさん。
意外に隠れファンの多いのがこのアリさんである。レギュラーたちの争いの最中に、突然、話をぶちこわしにやってくる。隊長アリの進軍ラッパによって、一糸乱れぬ行動を見せる。
ハンモックなどに乗ると、異様に大きい振動を起こす。アリが乗るだけでハンモックの上のトムたちは落ちそうになってしまうというメチャクチャさと、話に関係ないキャラクター性が受けたのか、3作に登場している。登場作品は、他に「ふんだりけったり
(’51)」「ブルさんのピクニック (’55)」。
「なにがなんだかわからない (’57)」。
ジェリーだけではない、トムにだってすごいいとこがいるのだ!この作品に登場するジョージは、猫のくせにネズミ恐怖症なのである。見かけはこの通り、トムそっくりなので、ジェリーは大混乱!強いジェリーのいとこに対してここまで弱いキャラにしたところが傑作です。
「気楽に行こうよ (’57)」に登場する、スペインの赤いネコ。
といっても、いつもの赤ネコではない。実はブッチである。スペイン専用ブッチ、通称赤ブッチとでも呼びますか。
要するに、シリーズに登場する猫のキャラクターは4~5種類しかなく、ゲストの猫は使い回しで色を塗り替えて使うんですね。どこぞのヒーロー番組の怪人みたい。
T&Jの世界に出てくる人物は、顔を見せないという鉄則は、「空飛ぶほうき(’56)」から崩れてくる。女主人と、魔法使いが登場してしまったのだ。このページではそんな後期に登場した人物を紹介しよう。
「赤ちゃんは楽だね(’56)」より。
トムの主人夫婦。
「忍法ネコだまし (’58)」より。
職業は不明だが、サラリーマン風のダンナに美人の奥さん。このころには、足だけおばさんはいない。トムとジェリーはシリーズを通じて同じ家に住んでいるのか?それは謎である。
しかし、このキャラクター、のちのハナ=バーベラのテレビアニメに登場する(「原始家族」や「宇宙家族」の)キャラクターの原型でありますね。
「赤ちゃんは楽だね (’56)」「赤ちゃんは知らん顔 (’58)」に登場する主人の息子(娘?)。
ただひたすらトラブルに向かって歩み続ける。
同じ2作に登場するベビーシッターのジェニー。
日本版では「楽だね」では姉ということだったが、まちがいだろう。
電話で話し始めると止まらない、ありがちなねーちゃん。
おまけ
「空飛ぶほうき (’56)」より。
魔法使いのばあさんである。求人広告を出したら猫が来てしまった。弟子にするには頼りないトム。
ジーン・ダイッチ版に登場するトムの主人。
「狩りはこりごり (’62)」より。「くたびれもうけの魚釣り (’62)」にも登場。
とにかく怒りっぽく、乱暴な主人で、トムはかなり苦労している。「ああ、MGMのスタジオに帰りたい。」とぼやいたかどうか。
しかし、写真(左下)の象さん、もろにUPAしてますねえ。眠そうな目が何とも言えません。「象のシドニー」とそっくり。
ダイッチの第1作にして最高傑作(?)である、「猫はワンワン犬はニャーオ(’62)」の博士。
絵に描いたような(当たり前だ)マッド・サイエンティスト。精神交換機を発明し、不気味な古城で実験をする謎の変態!いや天才科学者。(しかし、この作品見たH&Bは面食らったろうな。)
C・ジョーンズ版T&Jに登場するメカネコ。
見事な大ボケキャラクターで、第3期の中では最も印象的である。写真は「未来戦争
(’67)」より。続けて製作された、「トムとジェリーウォーズ(’67)」にも登場している。右の写真は、トムの操るメカネコと、ジェリーの操るメカネズミ。